【宅地建物取引士】「制限行為能力者」の問題を解いて、思ったより手こずった話

第1章 「なんとなく分かるつもり」だったのに、手が止まった瞬間

宅建士の勉強を進めていて、先日、制限行為能力者のところの過去問を解いてみました。正直に言うと、思っていたよりずっと難しく感じました。未成年者、成年後見人、保佐人、補助人という言葉自体は知っているつもりでいたのに、実際に選択肢を読んでいくと、どれが正しくてどれが誤りなのか、すんなり判断できないところがいくつもありました。

個人的には、「知っている」と「解ける」はまったく別の話なのだと、この一問で思い知らされた気がします。同じように、制限行為能力者のところで手が止まった経験がある方は、意外と多いのではないでしょうか。

第2章 なぜこの分野は「表を覚えただけ」だと解けないのか

制限行為能力者の分野は、テキストを開くと、たいてい表で整理されています。同意権・代理権・取消権・追認権が誰に認められているか、というあの表です。表そのものは、見ればなんとなく分かります。ですが、いざ過去問を解いてみると、その表の知識だけでは足りない場面に何度も当たりました。

たとえば、「代理権が付与されることはない」というように言い切る文章が出てきたとき、表を眺めているだけでは、その言い切りが正しいのか誤りなのか、判断がつきません。表に載っている情報と、実際の判例や条文の細かい例外とのあいだに、埋まっていない溝があるのだと思います。ゆえに、この分野でつまずくのは、勉強不足というより、表の使い方そのものが違っていたからなのかもしれません。


第3章 制限行為能力者って結局何なのか、4つの権限と4パターンをやさしく整理

契約というのは、本来は誰でも一人でできるのが原則です。でも、判断能力が十分でない人がいきなり大きな契約をしてしまうと、あとで大きく損をしたり、騙されたりする危険があります。そこで民法は、判断能力が不十分な人、つまり制限行為能力者を守るために、「サポート役」となる保護者をつける仕組みを用意しています。

先に触れておきたいのですが、このサポート役が持つ権限は一つではありません。契約の前に「それでいいですよ」とOKを出す同意権、サポート役が本人の代わりに契約してしまう代理権、本人が同意なしに一人で結んだ契約をあとから「なかったことにする」取消権、逆に「この契約でいいですよ」と認めて確定させる追認権。この4つの組み合わせ方の違いが、保護の厚さの違いを生んでいます。

制限行為能力者は、判断能力の程度によって4種類に分かれます。未成年者にはすべての権限を持つ法定代理人(親権者など)がつきます。判断能力が常にない状態の人には成年後見人がつき、契約の代理と、あとからの取消しで本人を守ります。判断能力が著しく不十分な人には保佐人がつき、重要な行為についてだけ同意権と取消権を持ちます。判断能力が少し不十分な人には補助人がつき、家庭裁判所が決めた行為についてだけ関わります。

個人的には、成年後見人を「本人に代わって買い物カゴごと会計を済ませる保護者」、保佐人を「大きな買い物のときだけレジ前で『いいよ』とハンコを押す保護者」というイメージで覚えると、頭に入りやすいと感じました。成年後見人がついている人(成年被後見人)は、コンビニでお菓子を買うような日常の買い物以外は、原則すべてあとから取り消せるくらい手厚く保護されています。

ここで、最初につまずきやすいので先に触れておきます。成年後見人には、実は同意権がありません。成年後見人がいくら「いいよ」と同意しても、成年被後見人が一人でした契約は、あとから取り消せてしまいます。理由はシンプルで、成年被後見人はそもそも「同意の意味を理解して行動する」ことが期待できないほど判断能力が乏しいので、事前の同意という仕組み自体が機能しないからです。ゆえに成年後見人は、事前の同意ではなく、代理と事後の取消しという2つの手段で本人を守ります。この「同意権はない」という一点、覚え方を間違えると、本番でそのまま失点につながるところだと思います。

第4章 問題の4つの選択肢のどこにひっかけがあるか

実際に問題を解いてみると、まさに「同意権はない」を軸にしたひっかけが並んでいて、思った以上に手こずりました。

1つ目の選択肢は、後見監督人がいる場合、成年後見人は後見監督人の同意を得なければ成年被後見人の法律行為を取り消せない、という内容でした。これは誤りです。「取消し」は契約をあとからなかったことにするだけの行為なので、本人に不利益を与える心配がありません。後見監督人の同意が必要になるのは、逆に本人に不利益が及びうる重要な財産行為、たとえば不動産の売買や訴訟、贈与、遺産分割などを、成年後見人が本人に代わって行うときです(民法864条)。「取消し」と「重要な財産行為」を混同させる作りになっていました。

2つ目は、相続の放棄は相手方のいない単独行為だから、成年後見人が代わりに行っても利益相反行為にはならない、という内容です。これも誤りです。成年後見人は、後見監督人がいる場合を除いて、本人と利益が対立する行為はできません(860条)。たとえば後見人と本人がともに相続人で、本人だけに放棄させれば、その分後見人の相続分が増えてしまいます。「相手方のいない行為だから安全」という思い込みを、そのまま突かれた形でした(最判昭53.2.24)。

3つ目は、保佐人は同意権と取消権を持つが、代理権が付与されることはない、という内容でした。前半は正しいのですが、後半が誤りです。保佐人の基本の仕事は同意権・取消権で、成年後見人のような包括的な代理権は当然には持ちません。ただ、家庭裁判所の審判があれば、特定の行為について保佐人に代理権を与えることができます(876条の4第1項)。「〜ことはない」と言い切っている時点で、疑ってよいところでした。

4つ目は、令和4年4月1日に成年年齢が18歳になったため、18歳の人は年齢を理由とする後見人の欠格事由に当たらない、という内容です。未成年者と破産者は成年後見人になれないと定められていますが(847条)、成年年齢が18歳に下がった以上、18歳はもう未成年者ではありません。ここが正解でした。

4つの選択肢を並べてみると、正しいものを直接知っているかどうかより、誤っている3つがどこで話をすり替えているかに気づけるかどうかで、答えが分かれる問題だったように思います。

第5章 この問題から見えた、暗記じゃない解き方のコツ

今回問題を通して、あらためて感じたのは、制限行為能力者の分野は「表を丸暗記する」だけでは太刀打ちできない、ということです。ゆえに、次に似たような問題に出会ったときは、まず「これは同意権の話か、代理権の話か、それとも取消し・追認の話か」を切り分けてみてください。そのうえで、「〜ことはない」「絶対に〜」のように言い切っている選択肢は、一度立ち止まって疑ってみる。今回の3つ目・2つ目の誤りが、まさにこの言い切りの形をしていました。

個人的には、暗記に頼るよりも、こうして一問ずつ「なぜ誤りなのか」を言葉にしてみるほうが、結局は近道になると感じています。次に問題集を開くときは、正解を確認するだけで終わらせず、間違いの選択肢についても、一言で説明できるかどうかを試してみてください。

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